NEWS(研究活動)岩見沢校スポーツ文化専攻教員の間欠高酸素トレーニングの持久力向上効果に関する研究論文が国際的学術雑誌「Physiological Reports」に掲載されました
2025年5月9日
岩見沢校スポーツ文化専攻?鈴木淳一教授の研究論文「Exercise performance in well-trained male mice is promoted by intermittent hyperoxia via improving metabolic properties and capillary profiles(間欠的高酸素暴露下の運動は幼若期からトレーニングを積んだマウスの筋代謝特性と毛細血管網を改善し持久的運動能力向上に寄与した)」(https://doi.org/10.14814/phy2.70341)が、国際的学術雑誌 Physiological Reports (英?米生理学会共同刊行、Impact Factor = 2.2; Cite Score = 4.2)に掲載されました。
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研究の概要
[背景と目的]
昨年度発表した研究論文において(/info_topics_hue/iwa/detail/19758.html )、反復高酸素環境下(30%/21%)での持久的トレーニングは、有酸素代謝能力、特に脂肪酸とピルビン酸の代謝能力を顕著に高めることが判明し、持久力の向上に有効な手段であることを示した。一方、持続的な高酸素環境下(30%)のトレーニングでは、顕著な効果は観察されなかった。
今回の研究では、離乳直後の幼若期から自発的トレーニングを行い、安静群の約7倍に持久力? が向上した「アスリート?モデル(ATM)?マウス」を用い、反復高酸素環境におけるトレーニングの効果を検証した。
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[実験方法]
実験にはマウスを用い、離乳(3週齢)直後の5週齢から、小動物用回転運動装置によって、7週間にわたり自発走運動を負荷した。その後、最大運動能力テストを実施した。テスト結果を踏まえ、運動能力が同等になるよう、以下の2群に分けて4週間(週6日)のトレーニングを実施した。
○ET群:38分間の持久走→4分間の休憩→38分間のインターバル走(5秒間走り10秒間休憩を反復)
○INT群:常酸素下(21%O2)10分間+高酸素下(30%O2)10分間を3回繰り返す環境下でET群と同じ運動
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[結果]
持久力はINT群でET群よりも30%有意な増加が観察された。また、 INT群では、図のような代謝酵素活性の顕著な増加が観察された。また、INT群において、遅筋タイプのヒラメ筋および腓腹筋(赤色部位)と速筋タイプの足底筋において、毛細血管が顕著に増加していた。
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[結論]
反復高酸素暴露下でのトレーニングは、アスリートモデル?マウスにおいて、骨格筋の代謝能力と毛細血管分布を顕著に高めることが判明し、持久力の向上に有効な手段であることが示唆された。
我が国のトップアスリートに対する科学的なトレーニング方法の開発を担う、国立スポーツ科学センター(JISS)において、大学生競技選手を対象に高酸素環境下での運動トレーニングの効果に関する研究が実施されている。その報告では、”持続的”高酸素環境下(60%O2)での高強度インターバル?トレーニングによって、持久力の指標である最大酸素摂取量は向上したが、その程度は常酸素でのトレーニング効果と同等であった。つまり、”持続的”高酸素環境での運動では、持久力の更なる改善は期待できないことが報告されている(参考文献3)。
今回の研究成果は、持久力の更なる向上を目指す競技選手において、「反復高酸素トレーニング」が競技力向上への有効な手段となる可能性を示したものである。今後、スポーツ競技選手への応用が期待できると考えている。
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参考文献
1. Suzuki J, DOI: 10.14814/phy2.15534
2. Suzuki J, DOI: 10.14814/phy2.16117
3. Kon et al., DOI: 10.1016/j.resp.2020.103481
(本研究は、JSPS科研費 JP23K10579の助成を受けた。)
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